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2014年12月12日 (金)

集団的自衛権の行使容認 その認識は果たして適切なのか

年の瀬12月の衆議院選挙。投開票日が2日後に迫っている。
2年前に続いて2回連続の12月選挙になった。
歳末の多忙な時期で、かつ野党は候補者調整に奔走したためか実のある政策論争はほとんど見受けられない。事前の予想では自民党の圧勝、共産党の議席倍増との報道が目立つ。
そんな情勢でも様々なメディアでは、政策のポイントをいくつかに絞って各政党間の違いを図表にしたりして解説する報道が目立つ。
有権者にわかりやすく伝えようという努力なのだと思うが、解説するメディアの担当者や番組であれば出演者が正しく理解せず誤った認識で報道しているものも少なからずある。
その中で特に違和感を感じる「集団的自衛権」について少し糺してしておきたい。

NHKでさえも報道する「集団的自衛権行使容認の道を開いた」

先日のNHKのニュース番組でも、各党の外交安全保障政策を比較する前提の説明として「政府与党は海外で武力行使を可能にできる政府見解を発表した」という表現を使っていた。
また民主党、共産党をはじめ各野党は文章としては「専守防衛と平和主義を堅持する」「海外で戦争する国を作らない」等々の文言を掲げるにとどめているが、街頭演説等では「海外での武力行使に道をひらいた閣議決定を撤回させる」など「閣議決定=海外での武力行使容認」の構図を声高に叫んでいる。
共産党の議席倍増の予測という風は、そうした武力行使の危険への国民の反発ともいえるかも知れない。

確かに安倍首相の持っていた意図は海外での自衛隊活動にあったのだろう。
首相は政府見解を発表した記者会見でも、邦人輸送中のアメリカ艦隊との共同行動やシーレーン防衛についても言及している。
しかし安倍首相が言っているような事例も含めて、海外で部隊展開ができる政府見解になっているのだろうか。

もう既に忘れてしまった人が大半なのだろうと思うが、思い出してほしい。
5月下旬から7月1日にかけての緊迫した政治情勢を。
あの数十日間で集団的自衛権についての定義がどのように変わり、決定されたかを。

ひとつめのポイント 集団的自衛権行使の新3要件

今回の集団的自衛権の政府見解を2~3回繰り返して読めば多くの人は理解できるはずだ。
【リンク】→閣議決定全文 国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について

「これでは日本における集団的自衛権の行使は国際常識から見れば個別的自衛権とイコールである」「集団的自衛権は絵に描いた餅も同然である」というのが事実である。
今回の政府見解はさほど長いものではないので実際によく読んでほしい。
政府見解をまとめる過程で、自民公明の二党は様々な協議を重ねて複数の歯止めをかけている。
何点かポイントはあるが、今日はその中で一つに絞って紹介していきたい。

政府見解の中核になるのは言うまでもなく集団的自衛権行使の新3要件である。
それは「3.憲法第9条の下で許容される自衛の措置」の中で示された

1)我が国に対する武力攻撃が発生した場合のみならず、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合において
2)これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないときに
3)必要最小限度の実力を行使する

することは、従来の政府見解の基本的な論理に基づく自衛のための措置として、憲法上許容されると考えるべきであると判断するに至った-との文面である。
(※番号は便宜的にふりました。)

この文面からだろう、多くの人達は「集団的自衛権行使への道を開いた」と思っているようだ。この個所だけ見ればたしかにそのようにも読めるかもしれない。

誤解のないように一言触れておくが、この文章の中だけでも歯止めがかけられている。
・我が国の存立が脅かされる事態とは
・国民の生命、自由及び幸福追求の権利が覆されるとは
・「根底」からとはどのような事態か
・「明白な危険」とは
・他の適当な手段とは
・その手段がないという事態の判断は
・必要最小限度とは
・実力とは
・その行使の方法は
等々、行使を認定するためには個々の要件、その時点での情勢を審議することになる。
ただ今回はこの点は割愛して、次に指摘する点について論を進めることにする。

政府見解を「絵にかいた餅」にした 戦闘行為を行なっている現場の条件

しかし文章というものは全体をひとつのものとして見なければならない。
この前段である「2.国際社会の平和と安定への一層の貢献」の中で重要な前提条件を課している。それは

(ア)我が国の支援対象となる他国軍隊が「現に戦闘行為を行っている現場」では、支援活動は実施しない。
(イ)仮に、状況変化により、我が国が支援活動を実施している場所が「現に戦闘行為を行っている現場」となる場合には、直ちにそこで実施している支援活動を休止又は中断する。

という個所である。
つまり日本の自衛隊は戦闘地域での活動はできないのだ。また活動を行なっている場所が戦闘状態になった時点で休止又は中断することが決定しているのである。
この条件のもとでどう考えれば「海外で武力行使ができる道を開いた」という認識が出てくるのか甚だ疑問である。

実在しない 「集団的自衛権行使の新3要件」を満たす「非戦闘地域での活動」

さらに言えば「非戦闘地域での活動」に限定した個所から見れば、新3要件に当てはまる事態は我が国に対する直接的攻撃の場合以外には起こり得ないことになる。

言うまでもなく、直接的攻撃に対しては日本国として全力を挙げて自衛防衛を行なう。これは個別的自衛権の行使と呼ばれている。この点については議論の余地はないはずだ。

新3要件の冒頭の文章に続く「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し」とは、戦闘状態を意味する。戦闘状態の地域では日本の自衛隊をはじめ全ての活動ができないのである。
つまり、「集団的自衛権行使の新3要件」を満たす「非戦闘地域での活動」は現実にはありえないのである。
日本の近隣海域でアメリカ軍が他国の攻撃を受けていても、日本の自衛隊は出動できないのである。なぜならば攻撃を受けた時点で戦闘地域になるからである。
そうしたことから結論を言えば、日本の自衛隊が武力行使ができるのは、日本の国土及び国民が直接攻撃を受けた場合に限定されるのである。
今回の集団的自衛権行使の新3要件の設定は、事実上、日本における集団的自衛権を個別的自衛権の行使の範疇に押し止めたのであるとの憲法学者等のコメントはこうした現実に立脚している。

正しく評価されるべき 公明党の果たした役割

今回の政府見解をまとめ上げた背景には公明党の努力があったことは明白であろう。公明党が「平和憲法に背く議論は行なわない」等の理由をつけて2党間協議の場を蹴っていたならば、自民党主導での政府見解の作成が行われ、おそらく海外における自衛隊の武力行使の道が開かれたであろうことは想像に難くない。事実他の政党であれば議論のテーブルにつかないという選択をするであろう。
しかし公明党は敢えて火中の栗を拾う覚悟を決めて2党間協議に真正面から取り組んだことで、日本の安全保障は憲法遵守の道を外れないで済んだのである。

改憲反対と声高に叫ぶだけでは平和を守ることはできない。
現実の立法の現場で、行政の現場で直面する戦争の危機と向き合いながら、打つべき歯止めを打っていく。これが政治の使命であると私は思う。
平和憲法を現実に護っているのは公明党であり、今回は相当な危機的状況であったなかで公明党だけがこの危機に立ち向かったことで乗り越えることができたのである。
社民党でもなく、共産党でもなく、公明党がやり抜いたのである。
この事実を私たち国民は正確に認識すべきである。

事実、政府見解発表後も安倍首相は「ホルムズ海峡での機雷除去に自衛隊が派遣できる」との個人的見解を述べている。しかし政府見解を基準に判断すれば、ホルムズ海峡に機雷が敷設された時点で国際法的には「戦争状態」に入ったことになる。そこに自衛隊を派遣することは政府見解として禁じているのである。
果たして今回の政府見解は安倍首相が当初想定していたモノとは変質してしまっていることを首相自身がわかっていないのかなと思ってしまう。

メディア報道では、自民党と公明党は政府与党とひとくくりにされることが多いが、明らかに違う思想を持つ政党なのである。

手続き上の歯止め「事前の国会承認」を機能させる投票行動を

それ以外にも、情勢の認定における歯止めや手続き上の歯止めもかけられているのが今回の政府見解の重厚さの所以でもある。
そのひとつが「事前の国会承認」である。

政府見解の中では「原則として事前に国会の承認を求めることを法案に明記することとする」と明記されている。
上記のように明確に記述されている基準に基づけば、良識の府である国会において承認される海外派兵など存在しないことになる。たとえ安倍首相が「派遣できる」と主張しても国会承認がなければ派遣はできないのである。

来春には関連する法令が改正されることになり、おそらく事前の国会承認の具体的な文言が審議される。
全会一致というのは現実的はないため、「両院国会議員の3分の2以上の承認」等が国会承認の基準として審議されるだろう。

ただわずかの懸念をもつとすれば、最後の歯止めである国会が機能不全に陥っている状態であろうか。、仮に自民党単独で両院の3分の2以上の議席を持っていた場合で、安倍首相の考えで党議拘束がかけられたら危険な状態が生まれることになるかもしれない。その意味では自民党単独で3分の2の議席はとらせないことは、国会正常化の重要な要素になるだろう。

明後日に迫った衆議院議員選挙は良識の府たる国会を守る私達国民一人ひとりの戦いである。名実共に本当に働く国会議員を私達の投票行動で選んでいきたい。
そのためには、中途半端なメディア報道に惑わされることなく、何が真実かを見極めていきたい。間違った思想や認識は断じて放置してはならない。
そのように強く思うのである。

【関連情報】
閣議決定全文 国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について

安倍首相、憲法解釈変更について会見「批判を恐れずに行動に移した」(HuffPost)

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