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2013年12月28日 (土)

第104回桂冠塾 『クリスマス・キャロル』(ディケンズ)

1042013年最後の今月取り上げた本はディケンズ作『クリスマス・キャロル』です。

欧米ではとても有名で「クリスマスブックス」として子供達に読み継がれてきた作品です。 日本では読んだことがない方もそれなりにおられると思いますが、短編でわかりやすいストーリーですので、12月のこの時期に是非一度読んでみていただきたいと思って取り上げてみました。

■親しみやすいストーリー

ある年のクリスマスの前夜。
冷酷な商人スクルージの前に7年前に亡くなった元共同経営者マーレイの亡霊が現れ、スクルージの人生を悔い改めさせるために明夜から3人の精霊が現れると告げます。

この精霊は
「過去のクリスマスの精霊」
「現在のクリスマスの精霊」
「未来のクリスマスの精霊」です。
精霊はそれぞれの時代の、彼が縁をしたそれぞれの場面に、スクルージを連れていきます。

かつてどんな思いで生きてきたのか。
自分はどんな思いで仕事をしてきたのか。
過去の出来事を目の当たりにして、スクルージは忘れ去っていた自分自身の気持ちを思い出します。
そして、冷徹に接してきた身近な人達に謝罪し、施しの人生に劇的に転換していきます。

ある意味、とてもわかりやすいハッピーエンドの物語です。

■実際には難しい生命変革

作品の冒頭で、スクルージがどれほど冷酷で強欲な商売人であるか書かれていますが、実はそれほど歪み切った人間ではないと思います。
スクルージは、まず最初に「過去のクリスマスの精霊」によって、自身の若かりし時代に連れて行かれますが、その時代に到着するとまもなく、スクルージは当時の気持ちを思い出して涙を流し始めます。
実に、素直で感じやすい生命の持ち主と言えるでしょう。
人間というのは本質的には素直なものなんだということが言いたいのかも知れないかもなぁとと思いつつも、「あれっ?スクルージって強欲な歪んだ性格じゃなかったの?」と思ってしまいそうな場面でもあります。

では現実の人間は?というと、自分の過去の姿を見せられたくらいでは改心などしない人が多いのではないかと思ってしまいます。
「世間を知らなかった頃は純粋だったんだよ」
「様々な経験を繰り返せば、邪悪な人間も多いことを知るんだよ」
「現実の生活は親切な心だけでは生きていけないしね」
等々、様々な声が聞こえてきそうな気もします。

現実の社会では、全くその通りだと思いもします。
その一方で、西洋社会では子供達を中心に連綿とこの作品が読み継がれてきたことも、また事実でもあります。
善を施せば必ず良い結果がもたらされる。
そこには、人間の善性を信じ切ることの大切さも含まれていると思います。
しかし一方でジギルとハイド的な2面性を克服できないという現実も横たわっているように感じられてなりません。

長年かけて形成されてきた人間の生命の傾向性というものは、ちょっとやそっとでは変えることができないものです。その人の「生命のくせ」とでも言うのでしょうか。変えたつもりでも、いつの間にか元に戻っている...。そんな無意識ともいうべき生命の傾向性ですが、自身が変革するためには劇的に変えなければならない瞬間があるのだとも思います。

■変革は自分の決意次第 心こそ大切

一方で、しょせん心というものは自分の気持ち一つでどうにでもなるとも言えます。
他人から強制される環境であれば少し話が違うとも言えるかもしれませんが、それであったとしても自身の心までは壊されることはできない。
かつてガンジーが発した心の叫びでもあります。

白か黒か。
善か悪か。
人間の生命や人生そのものは、そんな二者択一ではない。
人生の当事者である自分であっても、自分がどう感じているか、どういう人生を送りたいのか、はっきりと自覚できないようなことのほうが多いようにも感じます。
かつて多くの先人が話してきたように、Yes-No、是か非かを求められる物事であっても、多くの場合は1対ゼロやゼロ対1のように明確なことはそれほど多くはない。
その内面においては「49対51」と「51対49」あたりを行ったり来たりすることが多いのではないか。
決して諦めることなく、また出てしまった結果に紛動されることなく、自分の思う決意を忘れずに地道に前進し続けることが人生そのものではないか。
私は、常々そのように思うことがあります。

また、一人一人のそうした心の動きを感じてこそ、多くの人達と触れ合って生きていくことができるのではないかと思います。

■クリスマスの淵源を考える

ちなみに当日の参加メンバーから「この作品はキリスト教的な教示を伝えるためという側面もあるのでしょうか」という発言もありました。
クリスマスはキリストの降誕(誕生)を記念する日とされていますので、そのように受け止める向きもないわけではないと思いますが、必ずしもキリスト教の教示のための作品というわけでもないと思います。

そもそもクリスマスがどのように西洋の家庭で行なわれてきたのか。
そのあたりを知ることから始めるとよいのではと思います。
今回はそこまでは論じることはしないでおこうと思いますので、興味のある方は調べてみるとおもしろいと思います。
ちなみに比較的わかりやすくておもしろいと思う本を紹介しておきます。

『誰も知らないクリスマス』舟田詠子作(朝日新聞社)
『サンタクロースの謎』賀来周一(講談社+α文庫)

今回初参加の松浦さん、ありがとうございました。
明年も継続して開催してまいります。
良いお年をお迎え下さい。

《当日の開催内容などはこちら》
http://www.prosecute.jp/keikan/104.htm

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