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2013年5月 9日 (木)

第95回桂冠塾 ゲーテ作『ヴィルヘルムマイスターの修行時代』 ※前半

0953月30日(土)に今月の桂冠塾を開催しました。3月と4月の2回でゲーテ作『ヴィルヘルムマイスターの修行時代』を取り上げました。
まずはじめに作品のあらすじを確認しておきたいと思います。

全体構成と物語のあらすじ

この作品は全8巻で構成されています。岩波文庫版は3分冊になっている長編小説です。全体の構成をあえて分類すると

1~5巻:演劇で生きていくことをめざすヴィルヘルム・マイスターの人生の軌跡
6巻:うるわしき魂の告白
7~8巻:子供と共に-キリスト教を基調とした秘密結社の行動を行う一族と出会い、愛と人生を考えるヴィルヘルム・マイスター

という感じになるでしょうか。少し長くなりますが作品の理解に必要ですので、あらすじをまとめてみます。

Ⅰ.第1~5巻 演劇に生きようとするヴィルヘルム・マイスター

裕福な商家に生まれ、家業を継ぐよう望まれていたヴィルヘルム・マイスターは、父の期待に反して、幼少の頃から演劇にあこがれ、長ずるに及んで、いつの日かドイツ演劇界の改革者になりたいと志すようになっていきます。

彼は、青春の情熱のおもむくままに、女優マリアーネに夢中になり、一緒に暮らしたいと願うが、父の反対は目に見えていました。折りから、見聞を広めるために修業旅行せよとの父の意向があったが、かねての希望を達成すべき機会に利用しようと考えたヴィルヘルムは、ひとまず自分だけが先に旅立って、どこかの劇団で地位を得てから、マリアーネを呼び寄せようと計画する。しかし実行の前夜、彼女から冷たくあしらわれて悲しんだ彼は、愛のかたみにと思って、彼女のマフラーを持ち帰るが、思いきれずふたたび未練の情に駆られて引き返したとき、彼女の家から男が出てくるのを見てしまう。彼女にパトロンがいたのではないかとの疑念を抱き、衝撃を受けて帰宅した彼は、マフラーの中から、その夜来訪する旨が書かれたパトロンの手紙を発見する。動かぬ証拠を手にした彼の苦悩は極限に達し、重い病にたおれる。

やがて回復した彼は、過去の情熱につながる一切を払拭しようと努め、黙々と家業に精励する。 しかし、初心はついに忘却しがたく、彼は旅に出る。

ヴィルヘルムは仕事で滞在していたある町で、駆け落ちに失敗した俳優メリーナと女のカップルに出会いその窮地を救う。
さらに別の町で女優フィリーネ達と出会い、愉快な休暇を楽しむが、その時サーカスの団長から虐待されていた少女ミニヨンを身請けする。
さらに彼は、不思議な竪琴引きの老人と知り合ったが、この老人とミニヨンの孤独な魂は、騒々しく浮ついた貴族や芸人の社会を遍歴するヴィルヘルムにとって、こよない慰めとなった。

快楽的な生活のうちにもヴィルヘルムの胸中を時として懐郷の思いが去来する。そんな折り、その町に現れたメリーナ夫妻の要望に応えて、金銭を用立ててメリーナ一座が立ち上がる。
折よく、ある伯爵一行に上演できる機会に恵まれる。
その伯爵を讃える前狂言をヴィルヘルムが企画し好評を博する。その間にヴィルヘルムはシェークスピア作品に出会って感銘を受け、一方でヴィルヘルムと伯爵夫人の間には愛が芽生える。同行していた男爵夫人の悪戯によって伯爵に露見しようになるが亡霊を装ってその場を逃れる。それによって伯爵は霊魂を恐れるようになるが、ヴィルヘルムと伯爵夫人はお互いにその思いを埋めて別れを迎える。

伯爵一行が移動し演劇公演も終了。メリーナ一座は合議制になり、旅をつづける途中で盗賊の噂に出くわすがヴィルヘルムの主張で旅を続けるが、襲われて金品を略奪される。
防戦したヴィルヘルムは重傷を負って失神する。意識を回復したときは、フィリーネの腕に抱かれていた。他に残っている者はミニヨンだけで、全ての団員は逃げ去ってしまった。途方に暮れるヴィルヘルム達に旅の一隊の旅行者が近づき、白馬から下り立った気高い貴婦人(騎士)がヴィルヘルムを介抱してくれる。

隣村にたどりついたヴィルヘルムは、一座の者たちと再会する。団員たちは彼を責め、めいめいの損害を彼に弁償させる。
ヴィルヘルムは自分を救ってくれた女騎士を思い、八方手を尽くして彼女を捜すが見つからない。
程なく一座の団員は、ヴィルヘルムの紹介で劇団座長をつとめているゼルローのもとに身を寄せる。ヴィルヘルムは座長の妹アウレーリエと知り合い、親しくなる。アウレーリエには3歳の男児フェリックスがたえずまつわりついているが、彼女はかつて貴族と関係して捨てられたことがあり、その子はその彼との実子だと思われている。
彼女は過去の恋をヴィルヘルムに語り、不実な貴族で恋人ロターリオに手紙を渡してほしいと言い残して病死する。

Ⅱ. 第6巻:うるわしき魂の告白

上流階級に生まれた一人の女性の告白手記で第6巻が構成されている。
女性の本名は明かされていない(以下「彼女」と記載する)。彼女は学問を学ぶ意欲に満ち、成長の過程で神への信仰を確立した女性として心情が吐露されている。

彼女は8歳の時に喀血し9ケ月間闘病生活を送り、その間に学ぶことの楽しさを知る。
当時の社会では女性が学ぶことを好しとしていなかったが、彼女は回復後も勉学や語学に励むと共にキリスト教の信仰と聖書に親しむようになる。
12歳の時に侍従長の2人の兄弟と親しくなり、兄と交際するが、兄弟は相次いで死亡する。
その後社交界デビューした彼女は、無為に思える日々を貴族の勤めと思って過ごし、彼女がナルシスと渾名した青年と交際する。罰金遊びから誤解を受けたナルチスは、大尉との決闘で大怪我を負う。ナルチスは看病した彼女に求婚し婚約者となる。しかし神との関係において一定の悟りの境地に達していた彼女は、通俗的な生活を送ってきたナルシスを精神的に受け入れることができず、快楽的なナルチスの行為を非難します。

第6巻の後半は彼女の信仰観が述べられます。

多くの若い人が感じる社交的な楽しみや娯楽に対して魅力は感じることはあっても、迷うことは決してなかった彼女。
善を選ぶことに何の迷いもなかった。
自分の幸福に関わることは自分で決めることができ、自分を混乱させる行為は受け入れないでいることができる。
彼女の中でそうした思いはナルチスへの愛を阻害するものではなかったが、ナルチスは疎遠になっていく。ナルチスに手紙を出して愛情を確認しようとする彼女。彼女を幸せにできるだけの地位に就ければ関係を進めたいと言うナルチスの手紙には、彼女が貴族の妻にふさわしい考えに改めるという条件が付いていた。数ヵ月後二人の関係は終焉します。

彼女の存在は、婚約者よりも神を大切に思う娘として知れ渡るようになります。
ある伯爵家との付き合いも濃くなり、数軒の親戚が移られて交際が広がり、彼女宅には叔父が滞在すようになる。叔父が結婚を希望する妹と共に、叔父の友人宅に滞在し社交界の務めを行うが、不摂生な生活に2度目の喀血を起こす。彼女は生きる希望を捨てた生活を送る。

母が重病になり、父も体調を崩し、彼女は自身の生き方を吟味する。
神の存在を確信し、神と交わることを得た彼女は、苦難に襲われると精神的な避難所(具体的な場所ではなく心の中にある)に急ぎ、報われて現実の意識に帰ってくるという精神世界を得る。
彼女の中において、神なくしてはこの世は存在しないことが証明されたのだった。

彼女にはキリスト教の様々な宗派は無関係だった。
ハレの改心派に帰依するが、改心は罪を深く恐れることから始まるという教義は、彼女には全く当てはまらず、彼女にとって神は求めるとすぐに姿を現した。地獄の責苦や悪霊など彼女には無縁だった。その間食養生的療法も続けた。

フィーロ一家が近くに転居してくる。とても気持ちの良い友人となり、フィーロから愛の告白を受けた(と文脈から推察される)。自身の中にある官能的感情に戸惑い、神に祈った彼女は、それまでの感情を乗り越えて真の信仰を見出す。彼女は心に翼が生えたと表現した。教会神父の説教も陳腐であることも悟る。その真情をフィーロにも伝えた。

フィーロ一家は異端者と思われているヘルンフート同胞教会と関係があり、創始者であるツィンツェンドルフ伯爵の著書を多く持っていた。著書を読んだ彼女はそこに自分が求めていた信仰があることを悟り、伯爵を信奉するようになる。彼女らの転回は表沙汰になり、宮廷牧師は失意の中で死亡する。

妹は叔父と結婚した。結婚式が行われた叔父の館での行き届いた配慮に感銘する彼女。「人間は神性の概念と少しも矛盾するところはない」「真剣にやらないでできるものは何一つない」等の叔父の考えに触れ共感する。芸術に対しての考えを開陳される。
叔父の書庫を見て全体を見渡すことの大切さを知る。大変興味のある医者で博物学者に出会う。

多くの招待客が去った叔父の館で天上の至福ともいうべき合唱を聞き、叔父から七宝焼の十字記章をいただく。
まだ嫁いでいないもう一人の妹が肺炎で死亡する。結婚した妹はショックで早産するがその後男の子を出産。父は熱病で死亡する。
ヘルンフート同胞教会の人々との交流を願い、施設を訪れた彼女だが、思いと違う現実に失望する。前出の医者に助けられて生きる彼女。妹は女子、男子を出産するが夫である叔父は急逝する。
彼女は妹の上の娘に夢中になる。上の娘は尊い行為によって施しを行う少女だった。
周囲からは自身の信仰が理解されない彼女であったが、そのことで信仰が後戻りすることはなかった。彼女自身の心の命じるままに正しい道を歩んだ。
彼女は、自分自身の力や能力を誇る危険に陥る危険は決してない、と断言して手記は終わります。

Ⅲ.第7・8巻 子供と共に・信仰をもとに愛と人生を考えるヴィルヘルム

話の流れは第5巻の終りから続き、ヴィルヘルムは亡きアウレーリエの手紙を携えてロターリオ男爵を訪ねる。激しく非難しようと勢い込んで乗り込むが、ロターリオの人柄と何か事情がある様子に触れて肩透かしにあう。
ヴィルヘルムは神父にアウレーリエの話をし、さらにローリエが親しくしている娘リューリエが原因となった決闘でロターリオが負傷。帰宅する脇にはヤルノがいた。
手当てをする若い医者が持つ鞄はかつてヴィルヘルムが盗賊に襲われた時に治療をしてくれた老医師のものだったが、若い医師は誰のものだったか知らないという。さらにヴィルヘルムは、取り乱すリューリエの付き添いを任されて家族の一員のようになる。

かつてアメリカに渡っていたロターリオは領地内の改革をめざしていた。同胞教会に入ろうとしているロターリオの義弟の伯爵は、かつてヴィルヘルムが恋した伯爵夫人の夫であることを知る。
ロターリオの治療のために老医師が到着する。かつてヴィルヘルムを治療した医者だった。第6章の手記もこの老医師が読ませてくれたことも明らかになる。

竪琴引きの老人のその後を語る老医師。竪琴引きは自分の内面にしか目を向けていない、空虚な暗闇しか見ていない、そして自分は男の子に殺されると思っているという。
リューリエは療養のためにロターリオの女友達テレーゼ邸に預けられることになり、ヴィルヘルムが同行する。ヴィルヘルムはテレーゼがあの女騎士ではと思ったが違っていた。
ロターリオへの尊敬と感謝の念をテレーゼに語るヴィルヘルム。ヴィルヘルムと同じ心だというテレーゼ。テレーゼは家政を管理経営する現在に至った経緯を話す。放漫な母の生き様と確執、そして母の出奔、愛する父の死とその後の困窮...そうした経緯を経て家政経済の資質を磨いていったテレーゼは、ロターリオと出会い、互いを認め合い婚約し結婚の日が近づく。しかしロターリオが旅行先で、テレーゼの母と関係を持っていた事実が判明し、破局した過去を語った。

ヴィルヘルムは館に戻り、ロターリオの怪我も回復に向かう。農家の娘、更にアウレーリエとの恋愛を語るロターリオ。ロターリオとの子供だと思っていた男の子は老婆が連れてきたことが判明。アウレーリエは別れの悲しみを紛らわすために手元に置いていたのだという。
ヴィルヘルムは男の子フェーリクスとミニヨンを引き取るために元の町に向かう。

フェーリクスとミニヨンを抱きしめるヴィルヘルム。傍にいる老婆がかつてマリアーネに付き添っていたバルバラ老婆であることに気づく。詰問するヴィルヘルムに老婆はマリアーネが死んだこと、フェーリクスはヴィルヘルムの子供であると告げる。マリアーネはヴィルヘルムに何通も手紙を書いていた。
一方、劇団はヴィルヘルムがいなくても順調だった。
老婆はマリアーネの来し方をヴィルヘルムに語る。マリアーネにパトロンとしてノルベルクを選ぶように仕向けたこと、別れの夜の顛末、マリアーネがヴィルヘルムを選ぼうとしていたこと等々。マリアーネが書いた手紙は、ヴィルヘルムの家族に受け取ってもらえずヴィルヘルムが贈った紙入れに残っていた。老婆はフェーリクスの養育費を理由にノルベルクからお金を引き出して老婆自身の生活に使い、実際の養育費はアウレーリエが出していた。
2人の子供をテレーゼの元に旅立たせるヴィルヘルム。劇団とも別れを告げる。

ヴィルヘルムが領地に戻ると、大叔父が亡くなりロターリオが遺産を相続することになっていた。ロターリオは既に出掛けていた。大叔父の遺産を元手に土地を購入する計画を実行に移すことになり、神父、テレーゼと共にその仕事に就くヴィルヘルム。実務はある商会に託すことになった。
数日後ヴィルヘルムはヤルノから自分達の秘密を明かすと告げられ、立入が禁じられていた古い塔に案内された。元は礼拝堂であったと思われる部屋に入ると、そこには大きな机と多数の巻物が収められた戸棚があった。
かつて祖父の美術コレクションの買取を仲介した人物、一緒に舟遊びに興じた田舎教師、かつて伯爵邸でヴィルヘルムを介抱した士官、甲冑に身を固めたデンマーク老王にふんした男-かつて演劇公演で助けてくれた存在自体が謎の人物-...。
ヴィルヘルムが出会った人物が次々に現れた。
混乱するヴィルヘルムの前に神父が小さな巻物を置いて言った。
「これがあなたの修業証明です」

修業証明を読むようにヴィルヘルムに促し、書棚の巻物を見るように告げる神父。そこには「○○の修業時代」と様々な人の名前が書かれた巻物があった。
駆けてくるフェーリクスを抱きしめ「おまえは僕の子だ」と叫ぶヴィルヘルムに神父は告げる。
「おめでとう」「あなたの修業時代は終わったのです」

※ここからが最終の第8章になります。

ロターリオが大叔父の土地を共同で購入する商会はヴェルナーの商会だった。二人は再会した。
フェーリクスの教育に思いを致すヴィルヘルムは、テレーゼへの求婚を決意し手紙を送る。戻ってきたロターリオは、土地が購入できたことを喜びつつ、国家への納税の必要性を説く。
ミニオンの容態が悪化したとの連絡が入り、ヴィルヘルムはフェーリクスを連れて、預けているロターリオの妹宅に向かう。来るべき伯爵夫人との再会に慄くヴィルヘルム。しかし途中で受け取った妹からの手紙の内容と筆跡から、ロターリオには2人の妹がいること、ミニオンを預かっているのはもう一人の妹、女騎士であることを悟る。

到着した妹邸で、祖父の美術品を目にするヴィルヘルム。ついに憧れの女性である女騎士ナターリエと再会する。ナターリエはミニヨンの病状とミニヨンが女の服装を身につけるようになった経緯を語る。
様々な事情の符合から、あの告白手記はナターリエの伯母であること、心清らかな少女がナターリエ本人であること、登場する人物がロターリオの一族の人達であることを知る。
ナターリエは一族の人達の考えとして、達観した者が後に続く者達を教育し導いていくことが必要との思想を開陳する。
また末の弟フリードリヒがこうした教育的事件の犠牲者かもしれないとも語る。

医師は、ミニヨンの生命をつなぎとめているのはヴィルヘルムへの憧れであると告げ、ミニヨンの告白を語る。
再会したミニヨンはフェーリクスを抱きしめる。少女達を教え導いているナターリエの清らかな生き方を尊敬し感謝する。ヴィルヘルムと過ごすミニヨンは目に見えて健康を取り戻した。
ヴィルヘルムはナターリエからまもなく妹の伯爵夫人が訪ねてくることを聞く。伯爵は同胞教会に指導者となるべく夫人と連れてアメリカに渡ろうとしている。

テレーゼからの結婚を承諾する手紙がナターリエの手を経て届けられた。ナターリエへの愛を再認識したヴィルヘルムは愕然とし思い悩む。
そんな時ヤルノが到着する。彼はロターリオとテレーゼとの結婚に障害がなくなったことを告げる。テレーゼとその母は実の親子ではなかったのだ。ヤレノはロターリオに状況を伝えるために去る。
この情報をヴィルヘルムと破局させようとの暗躍だと思いこむテレーゼは、この事実を信じない。到着した彼女はヴィルヘルムに抱きつく。その情景を見たミニオンはショックで急逝する。
医師はミニヨンの遺体を美しく保存する処置を施すことを告げる。

ヤルノは結社の活動を説明する。ヴィルヘルムは踊らされていたかのような屈辱感を味わい、反発する。
飛脚が到着し、とある伯爵が到着するという。その人物は弟フリードリヒであり、劇団時代に出会っていたフリードリヒだった。神父はテレーゼの母の来し方を語り、実の母ではない経緯を伝える。
ヤルノはある計画を実行するためにアメリカに渡ることを話し、ヴィルヘルムを誘った。その計画とは、各国に塔の結社の支社を創設し、革命などで失う危険がある個人財産を互いに保証しあうというものだった。
一方で神父は、大叔父の友人の侯爵がドイツ国内を旅行する際の通訳としてヴィルヘルムを推薦したいという。
ヴィルヘルムはこれらの提案を自分を追い払おうとする画策であると感じて立腹する。ナターリエといると心がなごむヴィルヘルム。幾多の恋をした彼であるがナターリエを愛していることを認めざるを得なかった。
侯爵が到着する。語り合われる芸術論を通して人との接し方の考えも展開される。

ミニヨンの埋葬ミサが始まる。
合唱隊が歌い、ミニヨンの美しく清められた遺体が現れる。遺体の右腕に刻まれた十字架上のキリスト像を見た伯爵は、ミニヨンが自分の姪であることを知る。

侯爵はヴィルヘルムに、ミニヨンの祖国を訪ねることを提案する。重ねてドイツ旅行の同行をお願いする。
その夜、伯爵夫人が到着する。互いに恋心を抱いていた二人の心は震える。
神父はある人物の告白を読み始める。
彼は3人兄弟で、兄は一族の惣領として、自分は軍人として、弟は僧職としてそれぞれの道を歩んでいた。しかし弟アウグスティーンは僧侶であるにかかわらず女性スペラータを愛してしまう。スペラータは両親の事情によって里子に出された実の妹だった。大人達はアウグスティーンに真実を告げて別れるように説得するが、弟は受け入れようとしない。スペラータは既に妊娠していた。二人は駆け落ちをするが連れ戻され、引き離されてスペラータは子供を出産する。
彼女を預かった神父は近親相姦の事実を告げず、それに匹敵する感情として聖職者に身を任せた行為を深き罪として、恐ろしい魂の苦悩を課した。スペラータは精神的に不安定になっていく。
子供は母と引き離されて湖畔に住む夫婦に預けられ活発に木に登ったりしていたが、あるとき子供は帰ってこず池に帽子が浮かんでいた。子供の遺体は見つからなかった。

様々な昔からの言い伝えが語られるようになり、スペラータは池に打ち上げられる骨を我が子と思いこんで拾い続け、次第に衰弱していく。骨が集まった頃、子供が生き返ったと感じたスペラータは天上への希望でいっぱいとなり、精神は肉体から解放され恍惚の中で死んでいく。彼女の遺体は腐敗することなく聖者のごとく敬われた。
アウグスティーンは彼女の奇蹟の話を聞き、僧院を脱走してスペラータの遺体に会いに行く。そしてアウグスティーンは行方知れずになった。

神父はアウグスティーンと竪琴引きは同一人物であるという。そして侯爵の次のような希望を伝える。
ヴィルヘルムとフェーリクスに旅行に同行してもらい、帰路でイタリアに来ていただき兄に会っていただきたい。兄はこの告白をした人物と友人であり、スペラータが受けた財産を預かっている。その財産を姪ミニヨンの恩人であるヴィルヘルムに受け取ってほしいと言う。
ヴィルヘルムは出発を決意し用意を整える。
そこに医者に連れられた未知の男が入ってくる。風貌は全く変わっていたが彼は竪琴引きの老人だった。人生に絶望した彼を立ち直らせたのは、いつでも死ねると思わせた阿片液の瓶だった。男の子に殺されるという妄想は克服できていなかったが。

そんな折り重大な事件が起こった。
フェーリクスが誤って阿片液を飲んでしまったのだ。解毒をさせようと手を尽くす大人達。責任を感じたアウグスティーンは喉を剃刀で切って自殺を図った。いったんは一命を取り留めるが、その夜に自ら生命を絶った。
フェーリクスは間一髪で阿片液を飲んでおらず助かることができた。フェーリクスを介抱する中で、ナターリエはヴィルヘルムとの結婚を心密かに決意する。

事件の影響で出発が延期になり熱病にうなされるような動揺した空気が流れる。ロターリオはヴィルヘルムに、自分達-ロターリオとテレーゼ-の結婚と同時に、ヴィルヘルムとナターリエが結婚式を行うことを提案する。
皆に祝福されて二組の男女は結婚することに。
最後にヴィルヘルムはこう言って物語は幕を閉じる。

「王国の価値は知りませんが、僕が身に余る、この世の何物にも替えたくない幸運を手に入れたことはよくわかっています」

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ざっくりあらすじを紹介しました。
それでもかなり長い文章になりましたので、内容についての所感等は次回に記述したいと思います。
※本文の引用は岩波文庫版・山崎章甫氏訳を出典としています。

《当日の開催要領などはこちら》
http://www.prosecute.jp/keikan/095.htm

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