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2012年8月 6日 (月)

第87回桂冠塾『生命について』(トルストイ)

087_27月23日(土)に7月度の桂冠塾を開催しました。
今月の本はトルストイの『生命について』です。

冒頭で水車と粉ひき職人をたとえとして、生命そのものへの考察が行われていない現実を指摘して本書は始まります。
人間は誰もが自分が幸せになりたいと願っている。
しかし自分の幸福は自分以外のものに左右されることに気づく。
そして自分だけの幸福を追い求めると結局は自分自身が幸福になれない。
自他共の幸福こそが唯一の幸福であり、それは宇宙を貫く根源的な法則に則っている。その法則に一致していれば人間は幸せになれるのだ。

トルストイはそのように主張する。

1)人間や社会を超える、根源的・普遍的なものがある。
2)我々の理性は人間が作ったものに従うのではなく、本源的なものに一致しなければならないし一致することができる。
3)根源的なものに一致していれば、人間は生き抜くことができる。

これが本書を貫くトルストイの生命論である。
ではトルストイの言う「根源的なもの」とは何か?
トルストイは、愛と宗教こそが純潔で高い二つの感情であると訴える。
そのうちの「宗教」についてさらに考察が続く。
トルストイにとっての宗教とは何か。トルストイはその本質を「神」の概念とあわせながら次のように論理を展開します。

1)生命は不滅である。
2)神を理解しないが、神を信じる。
3)永遠の報いを信じる。
4)良心を承認する。
5)霊と肉が衝突する時、霊が勝利する。
6)神の隣に自然があり、その隣に民衆がいる。

確かにここに生命の本質があるのではないかと感じさせる力強さがある。
生命そのものは厳然として存在する。
このことを否定する人は限りなく少数派である。
しかし生命そのものを論じてきた人は、日本においては間違いなく少数派である。
なぜか生命を論じることを忌避する風潮が厳然と横たわっている。
しかし、生命そのものを直視することなく、自分自身の生命を全うすることができるだろうか。
今一度改めて、生命を直視し、論じ、そこから見出した生命法則に則って人生に挑戦することが必要だと訴えたい。

従来、日本語訳としては『人生論』とのタイトルで読まれてきた作品。
しかしこれは決して「人生論」という程度のものではない。
まぎれもなく生命論である。
この作品を「人生論」と呼んでしまうところに、日本人の哲学不在、宗教不在の浅薄さを感じざるを得ない。
この本を購入しようと思っても、現在は出版社在庫なしの状態。
名著が売れないのが現実なのです。
読みたい方は地元の図書館等で借りて下さい。

《開催内容等はこちら↓》
第87回桂冠塾開催内容

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