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2012年5月30日 (水)

東電の料金値上げ申請 企業として甘さはないか

今月29日、東京電力から出されている家庭向け電気料金の値上げ申請を審査する経済産業省の専門家委員会の第3回会合が開かれた。
今回の値上げ申請している電話料金の原価として以下の費用が含まれていることが判明した。

(1)原発事故の賠償手続き等にかかる人件費 年間278億円
(2)福島第一原発安定化に向けた費用(汚染水処理など) 年間487億円
(3)今年冬以降3年間5回分のボーナス分 734億円
(4)再来年度新卒社員採用に伴う人件費 ※金額不詳

果たしてこれらは適切な原価算入といえるだろうか。

まず(1)についての妥当性は疑わしいのではないか。
東電が原発事故の被災者に支払う賠償金は、政府の原子力損害賠償支援機構から資金支援を受けて充当している。その手続き等にかかる経費を電力利用者が負担することにどのような根拠を提示するのだろうか。既に失敗した経営判断の責務は株主が追うというのが法人経営の原則ではないかと私は思う。

次に(2)についても(1)と同様の考えである。
もし仮に福島原発の安定化に失敗すれば利用者にとって電力が利用できなくなるリスクがあるので利用者負担にも一理があるという論理を展開する向きがあるかもしれないが、それは市場原則を逸脱した考えであると指摘しておきたい。
仮に、東電が事故後の福島原発安定化に失敗して経営的危機に陥った場合、そのリスクを利用者が負担する義務も義理もない。他の電力供給者と契約して電力を利用するというのが市場原理である。現実には独占企業だから利用者に選択余地はないのだが、仮定の話で考えれば利用者負担の妥当性も少しはわかるのではないかと思う。
上記のような利用者負担妥当論者は、市場の独占状態が長く続いてきたことによる驕者というか独占企業ボケとでも言えばよいだろうか。

(3)については論外、言語道断だ。
企業の資本に国家予算=国民の税金を投入しようかとしている企業の従業員に支払うボーナスの原資を、なぜ電力利用者が負担しなければならないのか?確かに既に給与の一律20%削減を行っているという理屈を述べる東電幹部の姿が目に浮かびそうだが、東電社員の給与は20%カットしても日本のサラリーマンの平均的年収水準を大きく上回る高金額なのだ。
よく考えてみてほしい。企業自体が倒産していてもおかしくない国家的な重大事故を起こしたのだ。東電経営陣には、法人を清算して全ての資金を賠償に充ててもおかしくないほどの社会的事件を起こしたのだという自覚はないのだろうか。投下された税金相当額を国家に返納して、甚大な影響を及ぼした様々な産業界への償いをし、自力による経営ができるまではボーナス無支給でやらせていただくという経営決断ぐらいあって当然ではないだろうか。
仮に「ボーナスの支給がないと生活設計ができない」という東電社員がいるのであれば、早々に転職するしかないだろう。何度も繰り返しになるが、本来であれば倒産処理してもおかしくない状況なのだ。社会インフラの一端を担う地域独占企業ゆえに他の企業がないから、経営継続という選択をしているだけのことだ。そのことを深く自覚してほしいと思う。

(4)についても同様だ。
経営が再建できたら考えればいい。もしくは将来の経営のために株主が負担して先行投資するという判断もあるだろう。いずれにしろ利用者への転嫁の根拠は甚だ乏しいと言わざるを得ないと私は感じている。

こうした料金値上げの根拠となる原価内訳が、今まで公開されることがなかったという事実。これが長年行われてきたことに対して、東電経営者に、またそうした行為を看過してきた政府と国会に猛省を促したい。

【関連リンク】
東電値上げ 料金原価で意見分かれる(NHKニュースWeb)
東電、賞与に3年間で734億円計上 経産省委員会が議論(MSN産経ニュース)

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