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2009年11月12日 (木)

日本を方向づける重要な作業「事業仕分け」 玉石混交の実態

昨日11月11日から政府与党の行政刷新会議による「事業仕分け」が始まった。
来年度予算95兆円から削減を目指して「447事業」がピックアップされ、3つのワーキンググループに分かれて9日間「査定」が行なわれる。

こうした国レベルの事業見直し過程が国民の公開される形で進むのは画期的な出来事である。「事業仕分け」の手法自体は民主党政権が独自に編み出したものではない。国政レベルでは海外で先行事例が多くあるが、国内においても数年前から一部の地方自治体で実施されており、数十億円単位で削減効果を挙げている。
国政レベルにおいては、自公政権時代に始まった手法でもあり、いわゆる「埋蔵金」が明らかになる一端にもなった。しかし、その全過程が傍聴希望者やインターネットで見ることができるのは自公政権時代には実現できなかった。
その意味で政権交代した意味は大きい。
※希望を言えば各人の表情がわかる程度に、もう少し鮮明な映像配信にしてほしい。

その一方で、随所に稚拙といわざるをえない対応が見られている。
「危険」と言い換えたほうが正しいといえるかもしれない。

国家レベルの事業の成否を1時間で結論づけることの是非。
もちろん族議員や既存権益で続けてきた事業も少なくない。その一方で、何年も十何年も様々な角度から検討して実施してきた事業もある。少なくとも仕分け人がこの場に臨むにあたり、関係者や専門に研究してきた人達や事業に携わってきた現場を検証するという前工程が必要ではないか。それがなされたという印象は、限りなく薄い。

仕分け対象に選定された447事業と対象とされていないその他の事業の妥当性も重要である。
なぜ今回の447事業なのかという説明は全くなされていない。
どのような基準で、どのような評価軸で事業を選択しているのか。もしそのような基準がなくて選んでいるとしたら、早急に評価シートを作成公開し、全事業にわたって「事業仕分け」の対象にするかどうかの評価作業を実施すべきである。

各事業の見直し作業の開始時に必ず財務省の主計官が方向性についてコメントしている点も、よくないのではないか。
薬価見直しという医療の基幹をなす見直しにあっても「先行医療薬の価格をゼネリック(後発)薬の価格に近づける」という主計官の発言から始まり、各仕分け人もその方向の発言が目立った。奇しくも仕分けメンバーの一人でもある厚労省の担当者が指摘したように、そんなことをしたら後発薬を買う人などいなくなってしまう。ゼネリック薬品メーカーは倒産してしまうのではないか。明らかなミスリードである。
さらにいえば、先行薬を開発した薬品メーカーの開発費を本当に回収できるのかという見通しなど、仕分け人の発言からは、全く感じられない。
率直な印象として「財務省の意向に引きづられている」「もっと多角的な検証をできるように勉強してきて下さい」と感じた人が多かったのではないか。

仕分け人の研鑽不足という意味では、他の場面でも気になった。
道路行政に関しての国交省とのやり取りだ。
まずそもそも「道路事業にはまだまだ無駄が多い」などという総論だけで何とかなると思っていたのだろうか。国交省担当者は「既に来年度概算要求の時点で新規着工の凍結などで前年比20%削減を実施している」と説明。まさか仕分け人はこのことを知らなかったわけはないと思うが、その後のやり取りは、明らかに国交省ペースであった。
総論でなんとかなるのならば、公開で事業仕分けをする必要もないだろう。
具体的な「事業のここの箇所」というふうに仕分け人が事前に精査した結果を提示して廃止や見直しを検討すべきであることは言うまでもない。

議論の最中に特に気になったのが、事業関係者への仕分け人の「態度」だ。
一例をあげて申し訳ないが、蓮舫議員はその代表例だろう。
短時間で結論を出すという制約の中で使命感を持って臨んでいるのはよくわかるが、人の話はよく聞くべきである。自分が聞きたいことだけを聞いて結論を出すというのは誤った結論を導く最も典型的パターンだ。「結論まずありき」もしくは仮説を裏付けるためのやり取りだと考えているとしたら、即刻考え方を修正しなければならない。
一人二人の担当者が広い分野にわたる突然の質問に的確に回答するのは至難の業である。これが蓮舫議員自身が「答える立場」であっても同様に右往左往する場面があるはずだろう。そうした状況の中で「データを把握していないから答えられないだろう」と攻め立てるのは、尋常な感覚の人間の発言ではない。単なる言葉によるいじめそのものである。
そんなことを言うくらいならば、事前に「○○について問い質しますので必要なデータを確認して資料を持参して回答して下さい」とアドバイスするほうが、ずっと国民国家の利益に資すると言いたい。
今の仕分け人の態度は傲岸不遜そのもの、独裁政治のにおいすら感じてしまう。
すくなくとも「民主」党の看板を掲げているのであれば、民主の原則を踏み外さないでほしい。
あくまでも、人格ある相手に対しての最低限の敬意を忘れないでほしいと思う。

全般を通して「仕分け人」の資質も非常に気になる。
そもそもどんな基準で仕分け人を選んだのか。
国民新党からクレームに近い申し入れがあると、代替案として国民新党から仕分け人を1名追加するなど「言った者勝ち」。
このままでは無法地帯にもなりかねない。
あくまでも主権在民である。
国民の意見を代表、代弁する仕分け人でなければならない。

※一例をいえば、よく「経営者の代表としていかがですか?とふられたり、ご自身が「経営者の立場から発言しますが」等の発言も出てくるが、私も経営者の一人として聞いていても「それはあなた個人の意見でしょ?」と感じる発言も耳につく。その人の発言が必ずしも「経営者」の多数の意見を代表しているのか疑問もあり、正反対の意見が主流では?という発言もあった。質問をする前提として「正確に事業を把握しておいて」といいたくなるような質問も少なからず、ある。

その現実的な対応をどのように具体的に反映できるしくみにするのか。仕分け人をめぐっては大きな課題が浮き彫りになったといえるだろう。

※本論からそれるが「市場原理主義者だ」「外国人だ」という理由で公然と仕分け人を差し替えようとする姿勢に背筋が寒く感じるのは私だけではないだろう。

こうした事業仕分けによって出された結論も、どのように活かされるかも不透明だ。
前述したように、果たして本当に本質を見極めた結論なのか、疑問符がつく箇所も目に付くが、この結果が参考程度にしかならないとしたら、結果的には従来とほとんど変わらないだろう。
鳩山首相は、事業仕分けの結論は総理大臣の発言と同じくらいの重みがあるという趣旨の発言をしているようであるが、この人は、抽象論というか、精神論にとどまる発言が、実に多い。まさか「鳩山総理自身の発言が軽いので事業仕分けの結果も軽い」とブラックジョークを言っているわけではないだろう。
総理大臣と同じ重みというのであれば、法的整備を早急に行なうべきである。言葉だけで国民を煙にまけると思っているとしたら言語道断である。

まず今回の実施分については、事業仕分けの結果の妥当性の検証も含めて、公開された議論のステップを明示し、国家の方向性を間違わないように、正しくリードする政府であってもらいたい。
そして、今回の事業仕分けをスタートと位置づけて、今回実施内容のよい部分と悪い部分を検証し、修正して、継続的恒久的な事業見直しのしくみを確立することを念願している。

【関連リンク】
行政刷新会議ホームページ
行政刷新会議ワーキンググループ日程・ライブ中継サイト
社説:事業仕分け開始 国民が「劇場」の監視役だ(毎日新聞)
7項目500億円分に「廃止」 事業仕分け初日(朝日新聞)
【事業仕分け】蓮舫氏に「私の話も聞いて!」と声を荒げた女性は(産経新聞)
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