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2009年8月26日 (水)

本当にわかっているのか?年金問題 『今の年金制度が破綻している』という事実は、ない。

衆議院選挙の投開票日まで残り4日足らずとなった。
連日のテレビ番組では、様々なテーマで各党が主張を繰り広げているが、本当にわかっているのか?と思わざるを得ない発言が、実に多い。
それも、堂々と勘違い発言を繰り返す。「これが日本の政治家なのか」と、程度の低さにあきれてしまうこと、しきりである。

時間があれば、ひとつひとつの問題について、丁寧に説いて聞かせたいところである。が、なかなか時間もない。仮にひとつひとつ糾したとして、果たして各政党や候補者が、自らの主張の間違いを認めるだろうかという疑問も、ある(^_^;)
とりあえず、年金問題について一言だけ言っておきたい。

  『今の年金制度が破綻している』という事実は、ないのだ。

「未納が増えると年金制度は破綻する」というウソ

少し前に年金保険料の未納率がニュースになった。
国民年金納付率、最低の62.1% 記録問題・不況響く(朝日新聞7/31)
国民年金の実質納付率、3年連続50%割れ 08年度、社保庁試算 (日経ネット8/23)

この数字をもとに各紙の社説等も書かれている。
09総選挙 年金再建―対立超え安心の制度を(朝日新聞8/26付)
年金改革 党派の対立超え接点を探れ(8月14日付・読売社説8/14付)

未納4割というのは公的年金加入者全体で見ると5%前後。これは制度設計上、当初から織り込まれている見込みでもあり、仮に未納者が6割を超えようが7割を超えようが、制度運用上の支障は、ない。
これは少し調べると、誰にでもわかる事実である。
年金積立金という基金があり、一時的に入金が減るが、減った人の分の将来の年金支給額を支払わないでよいため、なんら支障はないのである。これは簡単な計算でわかると思う。かえって将来の支払い時に税金投入(現行制度で2分の1)分を使わないため、国家財政的には楽になるのである。

にも関わらず、制度崩壊の大変な事態になっている、という論調ばかりである。
政府与党を追い落とそうとする民主党、社民党にいたってはさらに露骨に「年金制度はすでに破綻している」と報道番組の討論で堂々と述べている。
しかし、新聞各紙は「破綻している」という表現はしなくなっていることに、読者の皆さんはお気づきだろうか?微妙な言い回しをしながら、将来の「無年金者」「低年金者」が増加することが問題なのだと、論点をスライドさせているのである。

無年金・低年金者対策の意味とは

年金制度自体が破綻しているのか?
無年金者、低年金者が多く生まれることが問題なのか?
※ここで言う「無年金者」とは保険料の免除を受けている人のことではなく、自分の意思で保険料を納めないために受給年齢になったときに年金を受けない人をさす。経済的理由から保険料が払えない人には減免措置があるため、本人の意思表示さえあれば支給額が減るが無年金になる割合は極めて少ない。

この両者は、明らかに違う。

民主党は「すでに破綻しているので現在の制度を破棄してイチから制度設計を!」と訴えていることは周知の事実である。
しかし、新聞各紙の論調は、明らかに変わっているのである。
しかも姑息なことに、与野党ともに無年金、低年金への対策を考え始めたと書いている。いま指摘するまでもなく民主党は制度そのものが崩壊だと主張しているのであるから新聞各紙の主張は意図的な言い換えが含まれている。

それとも年金問題の本質がわかっていないのだろうか。
朝日新聞の社説ではこんな文章が載せられている。

「今の制度は百年安心」としてきた与党側が、さすがに制度のほころびを認め、年金を受けるのに必要な最低加入期間を現行の25年から10年に短縮することや、無年金・低年金者対策に取り組むと言い出した。

この記事を読んだ読者は、無年金・低年金者対策は年金制度崩壊の象徴だと受け取るだろう。
しかし、無年金・低年金問題は、現行制度の綻びでも、何でもない。
無年金は制度を利用しない国民の自己責任に起因する問題である。
低年金は制度の根幹とは関係ないことであって、年金受給者を広く広げようという意味で、現行制度が運用されているからこそ、できる話である。

無年金・低年金者予備軍を増加させたのは、マスメディアと民主党

年金保険料の未払い者が増え、将来の無年金、低年金予備軍を増やしているのは、他でもない、マスメディアと民主党をはじめとする「年金制度破綻」主張者の責任が大きいと私は考えている。2年近くにわたって言われ続けてきた国民も、不幸である。
確かに、年金運用の未熟さがある。
豪華すぎる保養施設、やらなくていい職員の福利厚生や無駄遣い、横領だってあった。
不正や怠慢については、断固たる姿勢で、対処しなければならない。
消えた年金記録の解明も残っている。
しかし、それと年金制度そのものとは、異質の問題である。

朝日新聞の論説委員ですら、この体たらくである。
不勉強が過ぎるのか、それとも従来「年金破綻」を叫んできた自らの過ちを認めたくないのか、いずれかだろうと私は見ている。
「政権交代」を旗印にする当事者は、おして知るべしである。
おそらくであるが、「年金制度はすでに破綻している」と叫んでいる候補者の何割かは、本当に年金制度が破綻していると思っているのだと思う。
野党の執行部など責任ある方々の多くも当初は破綻していると思ったのだろう。しかし、少し勉強して、それはまったくの誤解であることに、既に気づいていると思う。

大切なのは、過ちに気づいたときの行動である。
今回の選挙を見ていて、痛切に感じるのは、自分たちの言っている主張を実現したらどんなことになるのか、本当に考えていない政党、候補者の多さである。

20090826_2 少し前の本になるが、年金について書かれた一冊を紹介したい。

「未納が増えると年金が破綻する」って誰が言った?(細野真宏) 扶桑社新書

筆者の細野真宏さんは、わかりやすい表現と解説で年金制度の本質を説明してくれている。
この本の中でも、日経新聞論説委員・大林尚氏が、不勉強のためか、明らかに真実ではない論説を書き、その誤りを社会保障国民会議雇用・年金分科会で指摘されたことが紹介されている。
※論説委員の大林氏は反論できなかったにも関わらずその後も訂正しなかった。

日経新聞論説委員・大林氏のような主張が行われるのは、「知識がないために出てくる間違い」であると細野さんは断じている。
ちなみに、この本では、いま話題になっている全額税方式の「間違い」について、数学的観点から指摘してくれている。
実に、おもしろい本である。
ぜひ一読をおすすめしたい。

不幸なのは、自分が損をすると思って、無年金者になってしまう国民自身

ともあれ、私たち日本人は、とかくメディアで語られる話に、弱い。
無条件に「そうなんだぁ」と思い込んでしまうのだ。

不幸なのは「年金保険料を払うと自分が損をする」と思い込まされて、保険料を払っていない人達である。本来であれば、その人達が受給年齢になっても年金を払う義務は、国には、もちろんない。保険料をまじめに払った人とのバランスの問題も出てくる。そんな状況がわかったうえで、無年金者にもある程度、保障をすべきかどうか、本来の保険料の何割しか払わなかった人にはどのような年金支給が望ましいかというのが、いま議論されている「無年金・低年金問題」である。

それなのに、である。
マスメディアも民主党も、破綻だ破綻だと、結果的に「無年金者」になることを煽っておきながら、いまさら何をいわんや、である。
テレビであろうと新聞であろうと、真実を報道しているとは、限らない。特に、政治に関わる事柄については、相当に偏向している者達が存在していることは、周知の事実である。
大切なのは、自分自身で、考え、判断することである。
自分の判断の結果として、無年金や低年金を選び、老後は保険会社の個人年金や資金運用で自分でまかなうというのも、ひとつの選択であろう。

そのような人が仮に国民の9割になっても、年金制度は破綻しないのである。

この点を私達は、よくよく理解しなければならない。

あとだしジャンケンか?!今頃になって制度設計を明らかにした民主党

一度わかってしまうと、いまテレビ等で繰り広げられている年金議論の一方の主張が、いかに幼稚であるかが、よくわかるのである。
その証左であろうか。ここ数日で民主党の主張が、右往左往、二転三転している。
朝日新聞でも

税財源による最低保障年金を主張してきた野党側も、民主党が基本はあくまでも全国民が入る所得比例年金であり、社会保険方式であることを明確にした。最低保障年金は、年金額の少ない人のための補完的な役割で、新たに歳入庁をつくって保険料の徴収を徹底する、との考えだ。

と指摘されているように、期日前投票も行われている今頃になって、全額税方式との主張であったことを曖昧にし、最低保障年金は補助的であり、中心は所得比例年金の保険料方式であることが明確になってきた。明らかな路線修正であり、その変遷からみても、実質から見ても、熟考を重ねてきた制度案とは到底言える代物ではない。

年金保険料だけで所得の20%も負担するのか?!民主党案

民主党が主張する新制度では・・・

所得比例は全国民一律で所得の15%を保険料として徴収する(!)
主婦も世帯主の収入の2分の1と換算して保険料を払ってもらう(!)
自営業者の保険料負担は数倍に!年収400万円の自営業者の保険料支払いは月5万円に、600万円なら7万5千円になる(現行は月14,660円)。

このような事態.を、民主党を支持している有権者は知っているのだろうか?
大幅な負担増がすぐにわかるような、杜撰なかつ危険な制度設計だ。
民主党の年金案を支持している国民が期待するような、バラ色生活ではない。
民主党が今までこの負担増を明言してこなかったのはどういう考えであろうか。
サラリーマン世帯は夫婦で所得の22.5%を負担することになる。
多くの自営業世帯では現行保険料支払いの3~5倍以上になる。
そして、この所得比例年金の保険料に加えて、最低保障年金に相当する負担が消費税として上積みされるという制度設計になるのだ。
民主党案では、実に、一家の所得の20%が年金保険料の支払いに充てられることになりやしないか?
こんな高額な保険料負担で、生活をしていけるはずがない、と私は思う。
私達はこの案が本当に適切なのか、今一度見つめ直すべきではないだろうか。

社会保障全体への視点が欠けた、行き当たりばったりの政策案

加えて今後の社会保障の大きな負担として、高齢者医療費と介護の問題がある。
民主党はこの2点について、触れようとしていない。
高齢者医療制度に至っては、制度自体を廃止し、「負担増は国が支援する」という(マニフェストNo.21)。かつて高齢者医療制度の必要性を認めた民主党の考えは間違いだったのか?と問いたい。「国が支援する」と言っているが、財源は示していない。これでは税金投入ということになり、負担を強いられるのは国民になってしまうのではないか。

今回は、時間の都合で年金制度についてのみ触れたが、他の政策(案)についても同様に吟味するべきであると、感じている。
国民の多くが、民主党を支持し、政権交代が実現するとのメディア報道が当たり前のように行われてきた今だからこそ、あえて問いたい。

この状態で、政権担当能力がある、国民の生活を支えることができると、本当に言えるのだろうか。

私たち一人ひとりの資質が、問われるとき。

百歩譲って、このような負担増も、本当に現行制度が破綻していて、新制度に移管しなければならないのであれば、我慢もできるだろう。
しかし、本当は破綻していないとしたら・・・
自分の発言に責任を取らない政治家が、実に多い。
ならば、私たち庶民が、自らの責任で行動するしか、ない。

とくに今は今後4年間の日本の社会保障、安全保障、国際平和、教育、経済、庶民の生活を大きく左右する、重大な決断の時である。
ある人が話していた一言が印象的だった。

「うっかり一票、がっかり4年」。

私達には、賢明になることが求められている。

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コメント

この記事をどう読んだのか、現状の厚生年金制度肯定者であると決めつけて批判をする人がいる。批判をするのであればその人の主張をよく理解してからにしてほしい。
この記事のどこに現状制度のままでよいと書いているのだろうか?国民年金の受給額だけで老後生活がおくれない現状は多くの国民が認識している。ちなみに私自身はサラリーマンではないので当然のことながら国民年金対象者である。

そのうえで年金一元化を主張するのであれば具体的な制度の概要を提示するべきであろう。
一元化とは何を指すのか?
現在の国民年金、厚生年金のいずれを基準とするのか?
国民年金にあわせるとすれば支給金額が低くなり老後生活が維持できない実態をどのように考えるのか?
厚生年金レベルに合わせるとすれば自営業者が個人として企業並みに保険料を負担すのか?それともその保険料相当額を政府に負担せよと言うのか?その財源はどうするのか?
そもそもなぜ戦後日本で、厚生年金制度として企業に保険料を負担するしくみが生まれてきたのか?そうした考察なくしてオウムのごとく一元化を叫ぶのは何の解決にもならない。
現在の年金制度のままでよいと思っている人がどれほどいるだろうか?多くの国民は何とかしなければならないと思っているはずだ。しかしそれは一元化というスローガンだけでは解決しないと主張しているのである。間違った方向へミスリードする罪は大きい。本来の年金制度の議論が迷路に入り込んでしまうからだ。

他人の意見を批判する者は、その主張をよく理解してからにするべきだと重ねて申し上げておきたい。
共済年金への税金投入の二重構造を改めよという主張は、このブログでも何度か記載している。それはあくまでも共済年金と厚生年金の一元化であり早急に改正すべきであると繰り返して述べておきたい。他者を批判するならそうした点もよく理解してから主張してほしいと思う。

真摯な議論は大いに歓迎する。だからこそ匿名で言いたいことだけをいう姿勢は改めてほしい。連絡先、本名を名乗って大いに語り合うことを提唱する。
また、相手を批判してから自分の主張をするというスタイルも改めたらよいと思う。そうすれば多少の勘違いがあったとしても議論の中で修正が可能になるからだ。大上段に刀を振り上げて批判をして相手にダメージを与え手からのほうが自分の考えを強く主張できると思うからだろうか、こうした論法で主張を組み立てる人が実に多い。
これでは議論が価値的に展開できる可能性が格段に少なくなってしまうと私は思う。

※連絡先を記載していない投稿は公開しません。公開を希望する場合は再度投稿願います。

投稿: 管理者より | 2013年4月17日 (水) 08時56分

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