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2009年7月 1日 (水)

英国事例に考える 陪審員制度の目指すものとは

イギリスの裁判で、被告の知人によって陪審員に圧力がかけられ、陪審員を抜いて判決を下すことが報道されている。
このニュースは、陪審制度に馴染みのない日本人にとって、驚かされることが多い。

①イギリスでは陪審員制度が定着

陪審員制度はイギリスが発祥の地であり、18世紀から続けられてきている。特に重大犯罪においては陪審員による裁判を行ってきた歴史がある。
日本における「法の専門家」による専権事項とは対照的である。

②陪審員の重み

被告人の仲間が圧力をかける事件が起きるということは陪審員の裁判への影響力が大きいということの裏返しである。陪審員の判断一つで判決が変わるからこそ、被告人関係者が圧力を、また場合によっては意図的誘導を図るのであろう。

③明白な法制度への挑戦

その歴史の中で、2003年の法改正で、一部地域を除いて陪審員が圧力を受ける可能性がある場合は例外措置として陪審員抜きでの審理が認められ、今回がその初適用だという。
今回に限らず、暗に陽に、圧力をかける輩が存在してきたということだ。
どんな制度にしても、それを破壊してしまうのは人間である。

④陪審員制度維持への熱意

さらに驚くのは、この裁判ではこれまで第一審の陪審裁判は3度行なっていて、その費用が実に2400万ポンド、日本円で約38億6400万円にのぼっている!
今回4回目を陪審制で行えば、陪審員の警護などで新たに600万ポンド(約9億7000万円)がかかるという。
確かに凶悪犯罪とはいえ、ひとつの裁判に40億円もの公的経費をかけているということだ。これが上告となればさらに経費は嵩んでいく。
日本では考えられない裁判にかける公的経費である。

日本の陪審員制度は、何を目指して導入するのだろうか。
いま一度、法の精神に立ち返って考えてみる必要があるのではないだろうか。
イギリスで、ここまでして維持運用されてきた陪審員制度。
運用に関係する明暗、制度を維持するための公的経費の執行ができる社会的、歴史的背景、そして国民的コンセンサスが、いかにして形成されてきたのか、学んでみたいと感じる事件である。

【関連リンク】 英で初の陪審員抜き裁判…被告の仲間が脅す : YOMIURI ONLINE(読売新聞).

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