第40回桂冠塾『月と6ペンス』(サマセット・モーム)
7月26日(土)に今月の読書会を開催しました。
今回の作品はサマセット・モーム作『月と6ペンス』です。
サマセット・モームには『人間の絆』などの代表作がありますがモームの存在を知らしめた本作品を取り上げました。
戦後しばらくの期間にわたって英語教育の教材に取り上げられることが多かったようで、中高年世代以上の方には懐かしく感じられる作家です。「モームの作品は英語の副読本で読んだ」という人もいました。
作品そのものの評価は必ずしも高いとは言えないかも知れません。
たしかに何らかの啓発を受けたという人は少ないようですし、私自身読了した感想としては問題提起の意識の高さに比して、独自の思索の深さというものはあまり感じられなかったように思います。
しかしモーム自身の文筆の力には驚嘆させらます。
とにかく先に先にと読み進めたくなる文章とストーリー展開。
適度な話の溜め方には、嫌気が差すほどひっぱりまくる今どきの報道番組のプロデューサー達にも見習ってもらいたいほど、抜群のタイミングを感じます。
モームの短編作品が高い評価を受けているのも、そうした点に大きな要因があるようにも思います。
モーム自身が強く感じていた問題意識とは何か。
それは様々な表現があると思いますが、ある視点から見ると「人間とは何か」という人としての本源的な叫びであったように感じます。
モームはその疑問を生涯持ち続ける中で、ゴーギャンという異色の画家の人生を知り、『月と6ペンス』の構想を具体化していったのだと思います。
ただ、その疑問についてのモーム自身の思索は深化することはなかったように思います。その裏返しとして、自分自身を「通俗的」作家という表現で自虐したのかなとも思います。
自伝的作品である『サミングアップ(The Summing Up)』では「自分は批評家たちから、20代では残忍、30代では軽薄、40代では皮肉、50代では達者、現在60代では皮相と評されている」と書いている。
そのように記述し、また自身もそのように表現することで、そこから先の思索を凍結してしまったように感じる。
モームには、そこで立ち止まることなく、人間そのものを直視し、掘り下げていく努力をしてほしかったと思う。
またそれができる人物だったと思いたい。
作品の発表から明年で90年。
サマセットモームの提示したテーマを解決する必然性が迫ってきているように思えてならない。
【実施内容などは→】第40回桂冠塾実施内容
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