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2007年6月 4日 (月)

年金記録問題は辞任要求ではなく救済と再発防止だ

昨日6月3日(日)のテレビの政治討論番組は年金記録問題の本質に迫るかと思っていたら、さほど目新しいこともなかったので少し肩透かしにあったような感もあるが(^_^;)この数日の報道で気にかかるものもあったので少し触れておこうと思う。

同じメディアといっても、当初こそ、いずこも加熱していたが、テレビと新聞では報道姿勢に相当な違いが出てきている。
新聞報道では既にこの問題にはスペースを割いていない。問題の所在と解決への道筋がひとまずついたと考えているのだろう。
それに対して、テレビ報道はあいかわらずの相当な加熱ぶりが目につく。比較的長時間にわたり政治問題をテーマにできる報道番組が週末に用意されているという事情もあるのだろうが、新聞報道に比べると、本質から逸脱した発言も多い。特に民放では、生放送でレギュラー出演者がコメントする番組が多いからだろうか、事実誤認や不勉強によると思われる感情的な発言も多々あり、不快感すら感じてしまう。

今回の問題の本質は社会保険庁そのものにある。
たしかに監督官庁の厚生労働省にも責任の一端があるわけだからその点ははっきりさせる必要がある。
しかしその責任のとり方は現在の大臣を辞めさせることではないはずだ。ましてや、安倍首相や与党の責任を問うような論調は、スケープゴートを作り上げて血祭りに挙げようとする蛮行と大同小異だと申し上げたい。

現職政治家に全く責任がないとは言わないが責任論を言い出したらきりがない。
現職の厚労相に責任があるというのであれば、基礎年金番号一元化の作業計画が練られた、まさにその時の大臣には、もっと責任がある。
現・民主党副代表の菅直人氏その人だ。

今回の年金時効特例法案と日本年金機構法案について、審議時間が短すぎる、強行採決だという批判も、的を得ていないだろう。
日本年金機構法案は3月13日に提出されて審議が続けられてきた。法案の中身の審議に踏み込まなかったのは民主党の戦略の結果だ。
年金時効特例法案については、審議時間が1日4時間のみであることが挙げられているが、この法案の趣旨は明白で緊急を要するものだ。第三者機関の委員の選考基準があいまいだなどというのは、法案そのものを審議する姿勢ではない。法案成立後、運用に入る時点以降に決定、監視し続けるべき事項だ。

それよりも、より本質的な議論があるはずだ。
なぜ、年金記録もれのような事態が、しかも5000万件もの大量に発生してしまったのか。そして、その事実が把握されてから10年間も、なぜ積極的な対策が講じられなかったのか。
その被害者救済と、原因究明及び再発防止対策を講じるという視点が絶対不可欠だ。

この点を比較的冷静に明確に主張していたのは、NHKの日曜討論に出演していた公明党の坂口力氏(元・厚労相)だったように印象を受けている。
責任ある与党としては、また厚生労働大臣経験者としては、当然の対応である。
しかし、他の政治家に比べると、ずっと納得のいく態度であると感じられる。
またフジテレビ系列「報道2001」に出演した、同じく公明党の高木陽介氏は従来の政府発表にさらに踏み込んで「2880万件だけでなく宙に浮いた5000万件を1年以内の徹底調査・照合を行なう」ことを明言した。
私も庶民の一人として5月25日ブログで早急に5000万件全部解明すべきだと書いたくらいだったので http://prosecute.way-nifty.com/blog/2007/05/5000_2114.html 与党の役職にある国会議員として、よく言ってくれたという気持ちだ。

対して、今回の問題で見苦しさを感じるのは民主党の対応だ。
マスメディアでは「民主党に風が吹いている」等の表現が見受けられるが、本当にそうだろうか。
前述の日本年金機構法案にしろ、今回の年金記録問題にしろ、抜本的対策を講じようという姿勢は、民主党からは感じられない。
年金問題は日本の将来がかかっている総国民的重要課題である。
一党一派の政争論点にすべきではないと私は思う。

なぜ民主党は、本質的議論を避けているように受け止められかねない国会戦術をとりつづけるのだろうか。
党としての統一見解が出せないという指摘もある。
国家的課題に取り組めるだけの見識と技量がないという指摘もされてきた。
それと同時に、特定の支持母体に支えられているがゆえに、その支持者の意向に逆らえないという指摘がもっともよくなされている。
今回の問題であれば、年金記録漏れを徹底追跡してこなかった最も大きな背景の一つに、雇用の縮少を懸念してコンピュータ化に消極的だった労働組合(自治労国費評議会と国公労連所属の全厚生労働組合)の存在が指摘されている。この団体には、宙に浮いた年金記録を解消するための作業に対してノルマを課さないように主張していたという指摘がある。
今回の日本年金機構法案にも反対を表明しており、その影響があるため、民主党内では社会保険庁解体に賛否の議論が取りまとめられないという見方もある。

支持母体があるのが悪いわけではない。
政治参加は国民が持つ権利であるからだ。
しかし、その特定の団体の利益のために動くのは政治家ではない。それは政治屋だ。
それを覆い隠すように、与党攻撃をしているのだとしたら、民主党の犯している罪は重い。
そうでないというのであれば、国会の審議で示してもらいたい。
真の政治家の議論を、切に望みたい。

【関連リンク】
ウィキペディア(Wikipedia)社会保険庁
日本経済新聞社説:年金救済、国民は顧客の視点で(5/29付)
ずさんな社会保険庁・年金記録不明が5000万件(5/25ブログ)
全厚生労働組合ホームページ
社会保険庁と国費評議会との間で交わされた覚書等に関する質問

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