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2007年6月 7日 (木)

コムソンの介護事業からの退場通告

6月6日、厚生労働省は介護事業最大手のコムソンに関して、全国に展開する約2000の事業所のうち1600箇所余りについて介護事業の更新を認めないよう、全国の自治体に通知した。
これは2006年に施行された改正介護保険法に基づく第一号の摘要事例となる。

私は開始当初からグッドウィルによる介護事業参入には疑問の声を投げかけてきた。
コムソンについては、以前から介護保険報酬の不正申請や介護サービスの不正等が指摘されてきていた。
勤務していないヘルパーを常勤登録する、行なっていない介護サービス分を受給申請するなどは常態化しており、自治体が事業指定を取り消そうとすると先回りをして突然事業所の廃業届けを出すという姑息な手段を繰り返していた。
突然の事業所閉鎖でサービスを受けられなくなった高齢者へのフォローなど、ない。
利用者を無視した営利追求集団と化したコムスンへの今回の措置は、当然というしかない。

しかも通知が発表された当日夜には、グループ会社(日本シルバーサービス)への事業譲渡によって介護事業を継続することを発表した。
このような手段が認められては、断じてならない。
これは、不正を繰り返した悪徳業者が下された法的制裁に対して、昂然と反旗を翻したと言うことだ。
まぎれもない、法治国家への挑戦だ。
断固たる姿勢で、適正な法的解釈と運用を行うことを、強くのぞみたい。

今回の通達がどのような趣旨でだされたのか、理解しようという気持ちはもとよりないことは明白になったが、この程度の幼稚な考えしかできない事業体が日本最大手なのだから、なさけなくなる。

介護事業はスタート当初から矛盾を抱えた運用が繰り返されている。
サービスの提供量を確保するため、厳正な審査も課してこなかった現実もある。
都市部も過疎地域も同等のサービス提供を目指した行政側の弱みをうまく利用したのが、営利目的で参入した介護事業会社の代表格・コムスンだった。
コムスンが事業所を閉鎖すると、近隣数10km範囲に他の介護サービスを提供するところがないという地方も現存する。利用者にとっては絶対になくなってほしくない拠点だろうし、従事していたヘルパー一人一人は頑張っていたはずだ。
強い態度で臨めなかった自治体があったのも事実だろう。
諸々の思惑を呑み込みながら、介護保険に投じられる総費用は7兆4000億円を超える事態を迎えている。

そもそも、介護保険の考え方とは、何だったのだろうか。
今までの日本では、高齢になり自由が利かなくなると、家族が身の回りの世話をするという文化が継承されてきた。もちろん一部には、姥捨て山とかデンデラ野などがあったが、主流は家族による扶助であった。
近年、高齢化が進み家族による負担が大きくなり、また高齢者の一人暮らしという生活スタイルも増え始め、家族の考え方だけでは高齢者を支えることができないという考えから、社会全体で高齢者を支えようというのが、介護制度の根本的思想だと私は理解しているが、どうなのだろうか。

しかし現実は、もちろん違う。
社会の一人一人が支えようというのではなく、介護保険料を払うことで、介護サービス事業者にやってもらっているのが、現在の構図だと私は思う。
しかも、自分達で支えられる場合の家族でさえも「利用しないのは損だ」という考えに傾き、必要以上に介護サービスに依存し続けている。

元来、自助・扶助・互助が基本概念の介護において、利益を出そうという発想自体に大きな誤りがあるのではないか。
今の報酬体系では仕事としてやっていないという声を介護現場の事業所経営者、ヘルパー、ケアマネジャーの方々から聞く。
しかし、どうなのだろうか。介護を営利事業としてやっていいのだろうか。
また成り立たせていいのか。
様々な事業に携わってきた人間の一人として、今後の介護サービスのあり方を真剣に考えるときを迎えていると感じている。

【関連リンク】
株式会社コムスン
グッドウィルグループ
厚生労働省老健局の指導について
<コムスン>6万人どうなる 介護不許可で
厚生労働省ホームページ

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