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2005年9月10日 (土)

郵政民営化〔各論〕森本卓郎さんのコラムに違和感あり

9月8日付『NextONE』を読んだ。ベンチャーリンクの発行している週刊のWebマガジンだ。私はこのマガジンの愛読者でもある。
この中でUFJ総合研究所の森永卓郎さんのコラムで「郵政民営化で本当に得をするのは誰か!?」が載っている。森本さんは平衡感覚に優れた優秀なエコノミストという印象がありテレビにもちょくちょく出演されている。
9月8日付『NextONE』はこちら

森本さんのコラムのテーマは「郵政民営化による経済効果に潜む問題点」として3点を指摘している。この3点について一読すると「なるほど~」と思えたりするのだが、なんとなくしっくりこない。なぜだろうか。
思い至った。
それは私が経営者の立場で具体的に郵政事業を継続させるにはどうすればいいかを考えているのに対して、森本さんには経営をしようという立場ではなく具体的な提案がないからではないかと。
森本さんが指摘する3点を紹介しながら私なりの考えを述べてみたい。

①郵政3事業を分割することで経済性が下がるという指摘

それはそのとおりだ。しかし経済性を下げてでも分割すべきだという判断なのだ。もし仮に郵政公社を丸ごと民間企業にしたら不具合がないのだろうか。
まず金融については銀行法に沿って他の商業行為からの影響を排除しなければならない。また3事業の相乗効果を期待するよりも専門特化することによって事業収益をあげることが重要であるという判断、各事業の収益に責任を持つ企業体にするということが今年5月の特別委員会で明示されている。これには様々な意見があるだろう。経営者が違えば経営方針が違うのだから当然だが、一面大きな資本力のままでは民業圧迫との批判は必至だ。
では国鉄や電電公社のように地域会社に分割するのか。それではユニバーサルサービスはかえってコスト高になる。
制服なんて一緒にするように提案すればいいし民営化されたからって今の制服を使えばいいのだ。そんなことはいくらでもできる。
まずはそれぞれが分社化して適度な規模の株式会社になる。その後各社も競争関係になり、一般の企業との競争も始まるわけだ。
最初の時点で物流事業と金融事業ではそれぞれのフィールドが違うのは当然ではないだろうか。

②郵便貯金会社と郵便保険会社の株式完全放出によって外資に買収されるという指摘

経済の専門家である森本さんが言うのだからそのとおりかもしれないが、ではNTT株はなぜ小口の一般投資家が購入しているのかなと疑問に思う。民営化された企業業績がよければ国民が小口株主として株式を購入することもあるのではないか。さらに完全民営化は2007年施行の場合で2017年度になることが法案に明記されている。つまり10年間に何度かにわけて売却されることになるわけだ。「10兆円もの巨額な資金を出せるのは現時点では外資しかない」という指摘はあまり意味がないのではないだろうか。

③貯金と簡保のユニバーサルサービスが保証されていないという指摘について

これは何を指しているのだろうか?「過疎地の7220の郵便局で郵便貯金や簡易保険のサービスが維持される保証が与えられなかった」と書かれている。拠点ということであれば現在も7220局全てで貯金保険業務を行っているわけでない。
制度そのものという意味であれば関連法案に完全民営化までは保証されることが明記されているのだから、窓口会社にその業務は委託されることになる。
これは森本さんの表現が微妙にちがうのか勘違いされているのだと思う。

そして上記3点を総括して「民営化会社が分社化によってコストが上がった分を取り戻そうと猛烈な合理化に打って出るだろう」と指摘し「過疎地の郵便局からは金融と保険の機能が失われていくだろう」と結論づけている。
はっきり言って荒っぽすぎる論理だ。民間企業を馬鹿にしているとも言えるかもしれない。確かに経営の素人に任せてしまえばそのようなことも起こるだろう。要は新会社の経営者次第である。

では別の立場で考えてみよう。民営化しないで現状の公社のままでよいというのであろうか?それは国民として無責任ではないか。
公社化されて2年半。2期分の財務諸表がすでに公開されている。この財務諸表をご覧頂きたい。公社のままであれば2年後には確実に赤字に転落する。現行法令等の枠組の中での経営努力の範囲で精一杯努力しても2年が3年になるくらいのものだ。森本さんが指摘するような「法人税や株式注入で財政が潤う財務省」の姿など民営化時点では存在しないのだ。

おそらく森本さんは現行法案に上記3点を考慮した修正案で行けということだろう。しかしそれは考え方の相違だ。
特に分社化するかどうかは実際に事業の現場をやった人ならわかる。明らかに異なる事業を一緒の会社にすることはメリットよりもリスクが大きいのだ。「社長は一人でよい」と森本さんは書いているが、一人の社長で3事業をいきなり掌握するのはどうしても粗雑になる。3事業全てに卓越した経営者候補がいるのであれば是非紹介してほしい。私であれば必ずいったんは分社化し経営改善の進み方や事業展開によってM&Aという道を選ぶだろう。この際3事業が一緒になっていたらM&Aなど遅々として進まないに違いない。
株式の完全放出については10年間が長いとみるか短いとみるかだ。森本さんは10年間での完全放出は短いというのであろうか。ビジネスはそんなに悠長ではない。

評論家的な発言であればそれでもいいかもしれない。しかし当事者としての発言としては中途半端との指摘を免れないだろう。民営化後にいかに経営再建を行うかだ。民営化法案で雇用的な面での合理化は行えないことになっている。行うのは業務の合理化だ。「猛烈な合理化」など本当に経営のわかっている人のやることではない。ましてや「一人の社員で今までの2倍の仕事量をやらせる」なんてのは経営でも何でもない。経営を知らない愚人のやることだ。
経営改善の鉄則のひとつに「一の手二の手三の手」というのがある。それから考えても出てくる具体的な最初の方策は「成長企業への積極的な貸付」であり「物流の効率化と最新技術の導入」である。
私ならそのために1万人規模の追加雇用を提案するだろう。
経営の経験のある方や財務諸表がわかる方は下記に郵政公社の財務諸表などのリンク先を張っておくのでご自分で確認されることをお奨めします。

危機感を煽るだけでは賢明とはいえない。郵政事業が困難な状況であることは多くの人は理解している。だからこそ自らも当事者の自覚で経営の経験と叡智を結集して郵政事業を再建することが求められている。

【参考リンク】
第一期郵政公社決算の概要
第二期郵政公社決算の概要

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