« 憲法論議 | トップページ | 郵政法案審議拒否に思う »

2005年5月13日 (金)

一円落札

現在、行政改革の一環として積極的に進められている市場化テストが波紋を広げている。「市場化テスト」とは何とも馴染みのない言葉であるが、早い話が「官民競争入札」である。従来、官庁内で行なっていた業務の実施部門を見直し、入札制度を用いて従来の実施機関も入札を行い民間企業にも門戸を広げるものだと言えばわかりやすいだろうか。
今までの業務委託契約ではなく、当該業務そのものを一気通貫して全て行なうものである。従って民間が受託すればその職場には公務員は在席しないことになる。
ただし官側の抵抗は予想通り強く、本年度実施が予定されているのは厚生労働省管轄の5業務のみ。そのうち3件は社会保険に関する業務で、これら5件は従来から民間へ開放することを検討していたものだ。
【関連記事】社会保険業務の市場化テストについて

今回「厚生年金加入促進事業」の入札が4月21日に締切られ、新たな問題が浮上した。それが「1円落札」だ。当初スケジュールであれば4月28日に受託事業者が決定されているはずであるが、私の検索がよくないのか今日現在ネット上では確認することができなかった。
厚生年金加入促進事業とは厚生年金未加入事業所の事業主にコンタクトを取り加入を促す業務のこと。委託費は《基本額+加入させた成功報酬》となっている。
厚生年金保険、政府管掌健康保険の未適用事業所に対する適用促進事業に係る市場化テスト(モデル事業)の実施に関する方針について
この委託費を「1円」で落札したということのようだ。最低落札価格は設定されていないので手続きとしてはおかしくないということだろう。

しかし経済の仕組みから言っても1円で業務が行なえるわけはない。ということはより広い範疇の業務として収益構造を見込んでいることは間違いないだろう。例えば
(1)今回の業務を請け負うことによってそれに付随する随意契約業務を優先的に受注する
(2)実績を積んだ企業として次回以降の入札競争に優位なポジションを獲得する
(3)今回業務によってスキルを積み上げて新規の民間ビジネスに進出する
などである。(3)の場合は企業努力として大いに認められるケースであるが、(1)のケースは断じて監視阻止しなければならない。

判断が難しいのは(2)のケースだろう。こうしたやり方も確かにひとつのビジネス手法だ。しかしこの手法を行なうためには相当の資金力が必要だ。つまり資金力の小さい中小企業は弾き出されていつになっても参入できないことになる。
従って委託する側も単独の業務で見ていくのではなく管轄する全ての業務全体として委託費用を監視する必然性があるのではないか。
法的にも目的外の業務への公的資金流用の疑いも出てくるのではないか。

具体的な監視方法としては、落札企業と落札業務をマトリックス一覧化し、落札金額、実際に発生するであろう想定コストを管理して、低金額で受注した法人団体がその業務の赤字分を他の落札業務で補填しようとしていないか、厳しく監視することを提案したい。特に想定価格よりも低額、就く1円落札した企業は要注意企業としてマーキングするべきである。また落札企業が随意契約での業務受注が発生した場合もネット等で公開することを義務づけるべきではないか。
市場化テストをはじめとする民営化、行政改革が、健全な経済活動を阻害し暴利を貪る哲学を持たない輩の悪の温床とならないことを願うものである。

|

« 憲法論議 | トップページ | 郵政法案審議拒否に思う »

社会倫理」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 一円落札:

« 憲法論議 | トップページ | 郵政法案審議拒否に思う »